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るろうに剣心 星霜編

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原作終了後、「追憶編」の延長線上で制作されたアニメ版るろ剣完結編。
「追憶編」の評価が概ね絶賛に偏っているのとは対照的に発表当時から今に至るまで激しく賛否両論。おかげで内容以上に問題作のイメージがついてしまっているが、実際には短い尺のなかで工夫に工夫を凝らして物語の結末を描こうとした非常に誠実な作品だと思う。
原作者が単行本で憤慨していた刃衛編を改めてやり直したり、ファン待望の人誅編ラストバトルを実現させたり、構成には限りない原作リスペクトが満ちている。
ファンブックで描き足された花見エンディングを頻繁にオマージュしたり、読み切り「弥彦の逆刃刀」のエピソードを発展させたり、更にはプロトタイプ版のヒロインを最後にゲスト出演させたりと、原作ファンならニヤリと出来るサービスも満点。
いやまったく、この作品からは監督:古橋一浩をはじめとするスタッフの「るろ剣」愛がひしひしと感じられる。間違いなくスタッフは「るろ剣」に全てを捧げていたし、その日々で得た全てをこの作品に投入してくれている。これはまるで古橋一浩からの原作への恋文のようだ・・・!!
で、愛し抜いた結果として、いや剣心と薫は死ななきゃ駄目だろ常識的に考えて。平和に笑顔で「お疲れ様」とかそんなんで良いわけないだろ的な結論に達してしまいました・・・と。
あ、いやそう、そうなんだよね・・・「るろうに剣心」が好きで、そのテーマに真剣に向き合ってきた人であるほどにそれはそう思うに違いないんだよね。仕方ないんだ、それは本当に。
薫の死体が実は人形でしたとか言い出したあの辺りから原作者の葛藤と迷走は読者を置き去りにするほど深刻になり、最終的に原作者はテーマに寄り添って死ぬことではなくエンタメとして作品の光を守る道を選んだ。それ自体は立派だった。
だがやはり、あの笑顔のハッピーエンドをどこかねじ曲がったものと感じた読者も少なくはない。古橋監督は恐らく、そういう読者の一人としてあり得たはずの可能性の実現に懸けたのだ。それもまた立派。
しかしそれは極めて不幸なことに、愛ゆえに愛するものの傷を抉り、愛ゆえに生き方すら否定する痛烈な批判に近いものになってしまった。そんな気はたぶんなかっただろうに・・・。
個人的には随分と時間も経ち、「新京都編」に「実写映画版」に「キネマ版」と再び「るろ剣」が動き出した今だからこそ原作EDと星霜編は陽と陰、合わせ鏡の同じものなのだと思える。
ただ、ここにくるまで長かった・・・。原作者も監督も、呪縛を超えるまで今までかかったってことなんだろうしなぁ。
とにかく今だからこそ、笑って振り返り良かったと言える。そんな幾星霜・・・。