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電脳コイル #26(終)

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「痛みを感じる方向に、出口がある」


4423とは、兄を失ったイサコの為に作られた、イサコの内面世界。
そこにヤサコが入り込み、そこに居続けたいと願ってしまった
二人の心から生み出されたものがミチコ。二人のユウコの淡い想いの残滓。
ヤサコとイサコは互いの存在と向き合い、現実に帰還する。
全ては終わり、ヤサコは中学生になる。イサコとは別れたが、
それでも二人は繋がっている。同じ道を歩き、同じ痛みを持っているから。
・・・というわけで、最終回。
いやもう、強引に設定謎解きテーマその他もろもろ、
語って語って語り抜いてどうにか時間制限ギリギリに
ゴールに駆け込んだって感じだったなー。
必要最低限のものは全て満たしてくれた、その完成度も極めて高い。
しかし、それでもエピローグの性急さにもうあと一話、
せめて半パート、いや五分だけでも余裕があったらと思われてならない。
あの絵だけで済まされたエピローグエピソードの数々、
ちゃんと描いて繋げてくれたらそれだけで素晴らしいものが出来ただろうに。
テーマ的にも、この最終回だけだと電脳=子供時代からの卒業という、
結構紋切り型なものに納まってしまっていて今までの振り幅からすると
少し窮屈な感じを受けるのだが、たぶんエピローグがしっかりあれば、
そういう子供の成長に対する大人側の視点とか、
喪失に対する各キャラのスタンスの違いとか、
もっと様々な要素が加わって深みも増していたのではないかと。
ただまあ、あの京子の成長した表情で締めるエンディングには、
そういう他の要素を敢えて排して喪失と成長のテーマ一本に
絞り込んで描いて見せたのかなという気もするので、
一概に描写が足りていないと言うわけにもいかないのかも知れない。
入らなかったからこそ、削ぎ落とされて純化するってことはあるからなぁ。


全体としては、とにかく丁寧かつ誠実なジュブナイルだったという印象。
現在の日本TVアニメが望み得る究極レベルの作画クオリティーや、
魅力的かつ時代性を良く汲み取った設定の数々など、
語られるべき部分は多い作品ではあるのだが、
そういう全てをひっくるめて「上質」という言葉が相応しいのかなと思う。
上品で知的で高密度、あくまでTVアニメという「俗」な存在に留まりながら
可能な限り質の高さを(単にハイクオリティーな作りということではなく)
求め続ける意思を礒光雄監督以下スタッフが最初から最後まで
貫き通していたのは実に立派だった。
何もかもが上手くいったわけではなく、特に構成については
恐らく途中の遊びが広がり過ぎて本筋を圧迫したような部分があり、
完全に成功とはいかなかったが、それでもここまでやれれば充分過ぎる。
アニメバブルも終焉を迎えようとしているなかで、
この作品が示したTVアニメの在り方は意義深い。
スタッフの皆様、お疲れ様でした。
しかし・・・こうして色々書いたけど、結局これ子供受けしたのだろーか?