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輪るピングドラム #24(終)

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愛は輪る、世界は輪る、運命は輪る、輪って還る、最終回。
各キャラの辿る運命の帰結、そこに用意されたピングドラムの奇跡については、逆にびっくりするくらいわかりやすく明け透けに語られていて、その点においては混乱はなかった。
選ばれた子どもにだけ与えられる林檎=愛=ピングドラムを互いに分け合い回し合うことで生きてきた者達が、愛の輪環の結果としての救済に至る物語は素直に感動的だった。
また全体の構造として繰り返してきた物語が最初に戻る形になっているのも、首尾一貫した構築が感じられて美しさがあったなぁ。
・・・と、一応そういった作品として、物語として納得のいく終わり方だったのは間違いないんだけど、どうしてもこう、すっきりしないというか取り残されたような戸惑いがあるというか、乗り換えに失敗して別の電車乗っちゃってるような不安感が消えない!!
これってつまり、愛の林檎は数少ないということも、選ばれない子どもはブロイラーに解体されるという現実も、運命を変えるには世界そのものを切り替えるしかないのだというミもフタもなさも、何一つ否定せず理不尽の全ては「そういうもの」として冷徹に投げ出されてもいるわけで・・・。
冠葉と晶馬が救われたようでしかし幸福に向かう旅立ちを迎えたに過ぎないことに象徴されるように、この結末は決して優しくはない。それはもう本当に優しくないと思う。
そもそも晶馬が冠葉と一緒にいってしまうというのは、「銀河鉄道の夜」の可能性としてあり得るものではあるにせよ痛烈だよなぁ・・・。
陽毬と苹果が魂の恋人同士のように残されて、兄弟は兄弟で消えてしまうってのも実に幾原っぽいとは思うんだけど色々とヒドいよ!!
晶馬はもっとワガママでいてくれても良かったのになぁ。与えられたものは返して、罰は受け入れて、愛は捧げて、それで当人は満足だとしても果たして運命を切り開いたと言えるのか。運命に殉じただけじゃないのかな・・・。
世界の乗り換えという概念もSF的な並行世界ネタで済まない割り切れなさを抱えていて、特に地下鉄サリン事件と絡む90年代との駆け引き、今に至る精算の問題が若干棚上げになっているように見えたのも気になった。
あの時代の亡霊である眞悧の呪詛が結局のところ浄化されず、そのまま置き去りにされる様子にはそう簡単に絶望は癒せないという諦観も感じた。
子ども達は生きていく、希望もある、しかし世界は穢れたまま、乗り換えを繰り返しながら進むしかない・・・そんな印象。
全体としては幾原邦彦最新作という期待値の高さを裏切らない刺激と魅力に満ちた作品だった。
作画演出のポップな感性と、新鮮味のある声優陣の繊細な芝居には毎回唸らされるところがあった。
ただ2クールものとしてはかなりバランスを欠いていて、途中のダレ場を回避出来ていなかったのがつぐづぐ残念。
あとは何より、2011年と90年代を繋げる作品がちゃんと用意されたという、TVアニメというジャンルの健全さが嬉しかったな。
非常に今年らしい、今年でしかあり得ない作品だった。スタッフの皆様、お疲れ様でした。