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ハウルの動く城

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ハウルの動く城 サウンドトラック
ハウルの動く城 主題歌 世界の約束
テルーの唄 (ゲド戦記 劇中挿入歌)
言わずと知れた、細田守放逐アニメ宮崎駿の劇場最新作。
ちなみに初見。
去年、世間を色々と騒がせていたイメージは
すっかり抜けていたので素直に観ることが出来た。
倍賞千恵子は、若いソフィーでは多少の違和感はあるが、
元々若い時から婆くさいというキャラなので作品を壊すような
欠点にはなっていない。逆に元気な婆さん状態の時は非常に上手いし。
木村拓也は、はっきり言って公開当事の悪評がわからない。
それくらい上手くハマっている。格好つけてるんだけど、
つけきれていないという本質の情けなさの部分が感じられるのがいい。
神木隆之介我修院達也は更に素晴らしかった。
この作品、話は途中から混乱をきたすのだが、
とりあえずマルクルカルシファー観てれば楽しめるという
作りになっているのがファミリー向けとして周到だ・・・。
作画は、宮崎アニメの集大成・・・というよりも、
宮崎駿が個人的に好きなものを詰め込んだという
趣味の結晶といった印象が強い。
過去資産の使い回しといえばそうなんだけど、
ありものでこれだけのクオリティーにしてしまうところが恐ろしい。
自由奔放な魔法の表現は、最近のゲーム的な魔法表現とは
一線を画していて、アニメならではの魅力に満ちていた。
で、問題のストーリー。
説明不足、とはちょっと違うような気がする。
たとえば、後半でソフィーの母親がソフィーを裏切るのだが、
その描写が淡白なうえ、二人の仲が悪いという情報が
前半で印象的に描かれてはいない。なので唐突な印象を受けるのだが、
よく考えるとソフィーは父親がこだわっていたという帽子屋に固執し、
母親はまったくそういう呪縛なく派手に暮らしている、
ということで一応二人が上手くいっていないことはわかる。
他の、ハウルは戦場で何してるのか、魔女はハウルをどうしたいのか、
マルクルは何でハウルの弟子になったのか、
カカシはどうしてあそこにいたのか、
ハウルカルシファーの本当の関係は何なのか、などなども、
説明がないわけではなく、あとでよくよく考えれば推測はつく。
伏線も設定もちゃんとあるのにわかりにくいのは、
単に密度が濃くて観ながら解釈する余裕がないのと、
キャラが観客以上に物分かりが良くて
観客を飛び越えてさっさと話を進めてしまう為だろうと思う。
ソフィーの呪いの変化とそれに対する周囲の反応がその典型で、
あれはたぶん、呪いがソフィーの精神を反映して
強まったり弱まったりしていて、そのことは周囲のみんなも、
途中からソフィー自身も気付いているんだろうけど、
別に深く追求していったりはしない。それどころではないから。
それにみんな、ソフィーが若かろうが年寄りだろうが、
ソフィーはソフィーなので関係ないと思っているのだろうし、
ソフィーは老婆になったことで得たものもあるので、
初期のように何がなんでも元に戻りたいと思ったりはしない。
だからラストでもソフィーの髪は白いまま。
ソフィーは呪いを受け入れて成長した、ということなのだろうが、
そういうことはセリフでわかりやすく言ったりはしない。
代わりにシーンどころかカット単位で変化する
ソフィーの外見でセリフ以上に雄弁にそのことは伝えている。
わかりにくいけど、不親切ではないよなぁ・・・。
ただ、そういう画面でテーマを伝えるパワーは素晴らしいにしろ、
それはそうやって訴える価値のあるものなのか、
というとそこはよくわからない。
テーマが弱いがゆえに、宮崎駿の趣味的なギミックと、
キスさえしてればハッピーエンドというハリウッド映画的な
ご都合主義ばかりが前面に出て感じられてしまうのも事実。
しかしまぁ、お祭り映画としてはこれでいいんだろうと個人的には思う。
「宮崎アニメ」には作品性そのものに対する期待だけでなく、
お祭り性というのもあるわけで、今回はもののけ千と千尋より、
多少お祭り寄りに作られたというだけなのではないかと。