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ジャングル大帝〜勇気が未来をかえる〜

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交響詩「ジャングル大帝」<2009年改訂版>~白いライオンの物語~(DVD付)
言わずと知れた手塚治虫の代表作を、監督:谷口悟朗、脚本:鈴木おさむ
キャラ原案:天野喜孝といったスタッフ陣で大胆に再解釈したスペシャルアニメ。
個人的には谷口悟朗が手塚原作にしてフジテレビのビッグプロジェクトである
この作品に対してどのようなアプローチを仕掛けるのかという点に
最大の関心があったのだが・・・序盤の展開については
ネオジャングルという現代的な設定が目立つ以外は驚くほど
オーソドックスな「良い子の」手塚アニメをやっていて意外だった。
谷口悟朗って元々エルドランや勇者の人だし、JSAT版ワンピースとか
ダイガンダーの絵コンテとかキッズ向けの技術も押さえている監督なので
こういう作品を無難にこなせること自体は納得なのだが、
それでも少し無難過ぎる作りじゃないかなぁと思わされた。・・・序盤は。
で、レオと人間側の主人公である賢一の友情を冒険を通じで充分に高め、
さあ準備が整ったというところで中盤から怒涛の展開が開始。
人間を恨む黒豹のトトは実はクローンだった!!
動物を一瞬で喰い殺すバッタ型ロボに立ち向かうパンジャ!!
ネオジャングルのリセット機能発動によって世界崩壊!!
しかし国連の査察官だと思っていた男が実はテロリストでシステム暴走!!
そして生き残りをかけた動物軍団VSネオジャングルの死闘が始まる!!
・・・と、終盤の一時間が完全に別のアニメになってしまった。
ただ、明らかに「ジャングル大帝」ではないのだが、
SF設定やカタストロフ展開が黒手塚っぽくはあるという絶妙なバランス。
前半で家族みんなで楽しめる白手塚と思わせておいて、
後半でひっくり返して大暴れするという構成だったのか・・・!!
一方で人間と自然、父と子、管理と自由といったテーマの軸は
最初から最後までブレさせず貫徹しているので、
話が随分飛んでいるはずなのに視聴者を混乱はさせないというのも見事だった。
テーマ語り自体も、表面的に見るとレオは父の魂を受け継ぎ
動物達は自由を取り戻してめでたしめでたしって感じになっているのに、
少し注意深く考えていくととても安易に済ませられる終わり方をしていなくて、
この辺のテーマ性のコントロールも谷口作品っぽくて興味深かったなぁ。
演出視点通りにレオと賢一の物語として見ればたとえ外の世界が過酷でも
みんなで頑張っていけばきっと大丈夫という希望に溢れた終わり方なのだが、
女博士のあのラストの暗い表情や親父の暴走の裏の理由を考えていくと、
決して人間による自然の支配というものを完全否定はしていないのだろうし。
一番気になるのはトトが語っていたクローンの成功例について
まったく語られずに終わっているところなのだが・・・どうもその辺も含めて、
ファミリーアニメとしてまとめる関係上匂わせるだけに留めた裏設定が一杯ありそう。
しかしネオジャングルって設定を誰が出したのか良くわからないけど、
谷口作品ってずっと閉鎖された環境からの脱出をテーマにしているのに、
何か毎回結論が微妙に変わってる気がするんだよな・・・。
プラネテス以降は「外」を目指すリスクや外に出たからといって
上手くいくとは限らないというシビアさが増しているような印象。
コードギアスはそれを承知で敢えて全て背負ってやり切るって話で、
今回はまず何より外を目指す意思を持たなきゃ始まらないって話・・・とか?
あと、声優陣についてはメインを実力派の本職声優で固めておいて、
脇役を芸能人キャストで埋めていくという手法が上手く機能していた。
それにしても船越英一郎小倉智昭の巧さには驚かされたが・・・!!
小倉さんあんな老人声が出せたのかー。