へたブロ~下手の考え休むに似たるのはてブロ~

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コクリコ坂から

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宮崎吾朗の監督二作目となるスタジオジブリ最新作。
80年代の少女マンガを原作にしながら、更に時代設定を60年代に変更し戦後復興や学生闘争テーマを織り交ぜた意欲作。
というか、脚本に入っている宮崎駿の哲学や鈴木Pの思惑など余計な意欲が入り込んで破綻しそうになっているのを、寸でのところで踏み止まり爽やかな青春恋愛劇としてまとめてみせた意地の一品という印象。
正直、戦争との距離感や学生運動への妙に甘ったるい憧憬など、とても自分に馴染んだ題材でやっているとは思えない、例えるなら学習雑誌に付いてくる教材マンガみたいな「丁寧だけどデータだけで描いてる」感があってその辺はまったく乗れないのだが、それでも与えられた場で最善を尽くそうとする真摯さには溢れていて嫌いになれない雰囲気がある。
後半これ明らかに徳間書店の社長じゃねーのという良識人代表な大物キャラが出てきて、うわぁとか唸ってしまったのだがそこも凄く大人の対処で演出していて感心したよ・・・。
またアニメ映画として成立される為の肝である「カルチェラタン」の描写について、「千と千尋」の湯屋みたいであると同時に「うる星やつら2」の学園祭準備シーンにそっくりなのが非常に興味深かった。
宮崎吾朗押井守は対談したり批判し合ったりしていたようだが、やはり通じるものがあるのか、それとも周囲が宮崎吾朗に押井的なものを求めているのか・・・。
画面の熱量という点では「ゲド戦記」と同じく基本が静的でアニメとしてはおとなしいのだが、そのぶん普通のドラマが普通に成立する形にもなっていて、そこは捉えようかも知れない。
ジブリが天才宮崎駿の手足となるだけでなく、その能力をより普遍的な国民的ドラマに込めたいと考えるなら、宮崎吾朗のこのバランス感覚は渡りに船には違いない。
ただこれで数十億と稼ぎ続けるのはさすがに無理あるから、さすがにどこかで商法を転換しなきゃいけないとは思うんだよなー。
アリエッティ」に続いてジブリの遺伝子を伝える方策は固まりつつあるが、具体的な十年後の未来がまだ見えない。
今年は宮崎駿高畑勲が恐らく最後の揃い踏みを迎える重要な転機になるだろうし・・・。